クリニックで



開院前に入ったクリニックは、それでも満員で、座れ

るのは入り口前の木の椅子だけ。

1時間は待つな・・・と思いながら、そこに座ってデジ

カメの画像の削除に熱中していた。


「ママが来ないから帰れない!」と、お婆さんがよろよ

ろと入って来た。

診察を終えて外で「ママ」のお迎えを待っていたらしい。

「ママは用事があって幼稚園に行っているんです」。

手には大きく電話番号を書いたA4サイズの紙を持ってい

る。


席を譲って「電話をかけてあげましょうか」と言うと「お

願いします」とおばあさん。

私だってお婆さんだけど・・携帯にかけたら〈切断〉中。

「タクシーを呼んでいただいたら」と言うと「私はお金がな

いからタクシーは乗れないんです、そんなこと言われると

泣きたくなっちゃう」と、顔を覆ってしまった。


真っ黒に染めた髪がよじれて、地肌の白いのが目立ちま

す。


受付でかけてくれた自宅の電話も留守。

隣に座っていたお婆さんが優しく話しかけていて、しばら

くすると「ママが来た!」。

お迎えが遅れただけのこと。

ママはお嫁さんでしょうか、幼稚園児と、このお婆さんの

お世話、頑張って!


鳩様、どうぞ高齢者や子供が心豊かに、いえ普通に暮ら

せる日本国にして下さい。